葉色は遮光の程度や日数に応じて濃緑化し、製品の敷きたくは良好になり、香味も普通煎茶と玉露の中間的なものとなる。玉露と同様、アミノ酸は増加し、カテキンは減少する。

簡易被覆園で栽培された茶は『かぶせ茶』と言われる。覆い下園の遮光にヒントを得て、普通の煎茶用園で簡易的な遮光栽培を行うものである。遮光率も覆い下園より低く、遮光率五〇％〜七〇％内外の黒色の化学繊維またはネットを用いて被覆する。覆い下のように固定した半恒久的な棚は用いないものが多く、簡単な移動式骨組みや、トンネル式骨組みなどを用いるか、チャ株面に直接被覆するなどで、被覆遮光の期間は平均二週間程度である。

覆い下園栽培技法が合理的に取り入れられるなら、全国どの地方でも玉露・碾茶は作る事ができるが、産地銘柄の扱いが重視される茶業界では、古来よりの玉露・碾茶の産地がとかく重視される風潮にある。近年若干産地に移動がみられたものの、宇治の位置は依然高く、玉露では福岡八女に、碾茶では愛知県西尾に首位を譲ったとはいえ、依然として二位を確保している。

品種としては『さみどり』『きょうみどり』『うじひかり』『あさひ』など、主として京都で育成された品種がより適する。その他にも『やまかい』『おくみどり』『さえみどり』『ごこう』などがある。

普通園より著しく多く、用いる肥料も有機質が著しく多用される。したがって肥料購入費も普通園よりかなり高額となる。

摘採はていねいに手摘みとされる。摘採が終わるとチャ株を地上三〇ｃｍ内外まで刈り下げ、その後晩秋までの間に、樹冠を十分再形成させるべく、入念な管理を行う。そして十分に生育し充実した枝条を、そのまま放任した形で、次の年に手摘みをする。

露天より覆い下園では若干遅れるが、強い遮光で収量は減少する半面、品質は向上する。

露天で生育した新芽に比べて、(1)葉緑素は約二倍近く(2)うま味成分のテアニンなどのアミノ酸類の大幅増加(3)苦渋味成分としてのカテキン類が減少(4)粗繊維が減少(5)覆い下園独特の香気成分ジメチルスルフィドが生じる(6)水分が増加し乾物が減少する。

遮光下で育ったチャの新芽は、(1)葉質が柔らかい(2)葉色は光沢のある濃緑色(3)葉厚が薄い(4)葉面積は拡大傾向である。

天然資材の場合も化学繊維を使用する場合も遮光期間は二〇日〜三〇日くらいまでである。遮光開始時期を早めて萌芽直後からとする例もある。